ピントと被写界深度についてその1
さて、ピントを合わせるときは、狙った一点にピントを合わせるということを前回は、
書かせていただきましたが、実は、手前から奥まで、全体にピントを合わせる方法も
あるのです。そのことについて、この項では書かせていただきたいと思います。
まずは、下の2枚の写真を見比べて見てください。
(写真参照)
ピントの位置に注目してください。上の人形の写真は、ピントが手前の人形の顔に
きていて、あとはボケていますね。逆に、下の森の写真は、ピントが手前から奥まで
すべてに合っていますね。
上の写真は、ピントが合う範囲が非常に狭いわけです。ピントの合う範囲のことを、
被写界深度という言い方をします。このように、ピントが一点に合って、あとは
ピントの合う範囲がない状態を、被写界深度が浅いといいます。
下の森の写真は、ピントが手前から奥まで、すべてにあっていますね。このように
ピントの合う範囲が広いことを、被写界深度が深いという言い方をします。
もちろん、被写体深度が深い状態でも、ピントの合う場所は一点にあります。
他の部分は、厳密に言えば、ピントは合っていないのですが、肉眼で見ている限り、
それはわかりません。また、このように、すべてにピントが合っているかのように
見える状態を、パン・フォーカスという言い方をします。
露出について、説明させていただいたときに、CCDに当たる光の量を調節するのに、
レンズを通過する光の量を調節する、絞りというもの(F5.6とか、F8とかの
数値で表される)が存在することは、お話させていただきましたが、
この、絞りの数値が大きくなるほど、被写界深度は深くなります。
被写界深度は、お話したように、絞りが大きくなればなるほど、そして、レンズが
広角になればなるほど深くなります。
また、被写体までの距離が近いほど、被写界深度は浅くなり(ピントの合う範囲が
狭くなる)、被写体までの距離が遠ければ遠いほど、被写界深度は深くなる(ピントの
合う範囲が広くなる)という特徴があります。
このように、レンズを通過する光の量を調節する絞りは、デジカメ写真の印象を
変える非常に重要な「絵つくり」の役割をすることを、まずご理解ください。
では、最初の2枚の写真について、もう少し解説させていただきます。
人形の写真ですが、この人形は非常に小さいものです。そこで、私はカメラを非常に
人形に接近させて撮影しています。そして、絞りをF2.8まで明けて撮影しています。
レンズは、100mmの望遠タイプのマクロレンズ(接近撮影用レンズ)を使っています。
つまり、絞りは開ける(レンズを通過する光の通り道を広くする)、接近する、という、
被写界深度(ピントの合う範囲)が非常に狭くなる撮影方法をしているのです。
そこで、人形の顔だけにピントが合い、その他はボケるという、被写界深度の
浅い写真独特の写真ができるわけです。
それでは、森の写真はどうでしょうか、私は35mmタイプの広角レンズを使い、
絞りをF16に設定して(レンズを通過する光の通り道を狭くする)、被写界深度が
非常に深くなるように設定して撮影しています。このとき、ピントは中央の木の幹に
合うようにしましたが、被写界深度が深いために、すべてにピントがびしりと
きている、重厚な印象の写真になります。
少し、余談になりますが、かの映画監督の巨匠黒沢明さんは、この被写界深度の深い
状態を非常に好んで、レンズの絞りを非常に絞って(光の通る道を狭くする)撮影
したそうです。黒沢監督の映画が、非常に重厚な印象を受けるのは、その加減も
あるといわれています。いずれにしても、すばらしい映画の数々であることは
おわかりいただけると思います。
さて、被写界深度(ピントの合う範囲)については、ご理解いただけたでしょうか?
たとえは少し悪いのですが、近視の人が、めがねや、コンタクトレンズを
つけていないときに、よく目を細めますね、目を細めるということは、目というレンズを
通過する光の通り道を狭くして、被写界深度を深くして、ものを見ようとしている
わけです。被写界深度と絞りの関係を、感覚的にご理解いただけるかと思います。
試しに、目を細めてみると、わかると思いますよ。